おかけんたの「えぇ~アート」#22

Osaka Art & Design2025
alan solo exhibition Re:Re:

LAUGH&PEACE ART GALLERY

♪えぇ〜街ブラしながら、アートやデザインに触れることのできるイベント がここ数年急増。この時期大阪は、10以上のエリアの 商業施設やギャラリー などを巡りながら展示が観れる 周遊型イベント『Osaka Art & Design』が開催され、『大阪・関西万博』で賑わう OSAKA AREA に彩りを添えています。昨年の『Osaka Art & Design2024』には、このコラムでも書かせていただいた『保科好宏 ROCK MEETS ART Yoshihiro Hoshina Collection ジェイミー・リードからバンクシーまで』(chignitta)と、『鈴木雅明 Follow the Reflections』(TEZUKAYAMA GALLERY)も参加。会期中、保科好宏 氏(ロック評論家、アート・キュレーター、アート&ミュージック・コーディネイター、BLUE NOISE LTD. 代表)と、chignitta の 谷口純弘 氏(chignitta 代表) の『TALK&DJ PARTY』が行われたのですが、トーク中「けんたさんの話も聞きたいなぁ」と、おニ人の視線が客席にいた私へと Lock on。

けんた(エコーがかった心の中での葛藤)「音楽とアートのエキスパートのお二人を相手に、単なる 音楽・アート好きの私の話 だなんて、知識は雲泥の差。繋ぎ馬に鞭を打つようなもの。ここは、『今日はえぇ声じゃないのでぇー』とギャグっぽく言って回避しよう」

気が付けば 保科 氏 と 谷口 氏に挟まれ、The Policee(ポリス) 初来日の際の 京都大学西部講堂 のライブのエピソードなど20分間喋りまくり、いつの間にか えぇ声 がほんまに ガラガラ声 になってしまってたとさ。

そんな『Osaka Art & Design2025』が今年も行われ、『安藤忠雄展 | 青春』VS. や『DOLK 来日記念特集』心斎橋PARCO 14階 など、注目の展覧会が目白押し。よしもとからは、『吉本新喜劇 吉田ヒロギャグアート展 Vol.7』髙島屋大阪店 1階 グッドショックプレイス、たいぞう 作品展示『輝く個性! こだわりストたちの世界〜感性で触れるアート展〜』と、こいつゃ春から縁起がえぇー。
そんな中 なんば にある LAUGH&PEACE ART GALLERY では、『alan solo exhibition Re:Re:』を開催中。

画像①
《That’s why the lady is a tramp》
25S
アクリル・キャンバス

alan(アラン)氏は、1979年 兵庫県西宮市 生まれ。母方の祖父が 一部上場某食品メーカーの創業者 で、父は別会社を経営。alan 氏は小学校2年生の時に他校を受験し、無事合格。小学3年生から 阪神間のエスカレーター式の私立 学校 へと転入。シュっとしてはったんやろなぁーと思いきや、足が遅くてお寝坊さん という 脱力少年。5年生の頃、毎朝遅刻を免れるため必死で走り続けた結果、なんと1年で校内でもトップクラスの俊足へと上り詰め、朝イチの スキマのスイッチ を ON にした 全力少年 へと一転。その当時から絵を描くことは好きで、ドラえもん や パーマン、人と鳥などを描いては友達に見せていたのですが、「ふーん」とリアクションは薄め。授業中は、教科書に載っている 正岡子規 などの偉人の顔を消して落書きをしたり、浮世絵の人物にヒゲを描いたり。

alan「こっちはウケが良かったです」

中学校 に上がると、バスケット部に入部。中高一貫で練習を行い、高2の先輩にも勝つ程のアスリートへと成長。が、しかぁーし、膝の成長と筋肉の成長の不調和により痛みを感じる オスグッド・シュラッター病 になり、バスケット部を退部。
実は 私 おかけんた も中学校時代 オスグッド・シュラッター病 にかかり、陸上部 を退部。競技は先輩からのアドバイスで、800メートル競走 をチョイス。後に 円盤投げへと移行し、円盤投げ から 砲丸投げ と何故か 投てき への変更が続く 。「この細腕に 砲丸投げ は無茶振り過ぎるわぁー」と思っていたのですが、今から考えると「投げ出しなさい」という 暗黙の了解 だったのかもしれません。早い目に辞めときゃよかった。

私の話はさておき。部活を退部し 時間が出来た alan 氏は、TVのバラエティー番組 や 深夜ラジオ に どハマり。

alan「圧倒的にオモロイことを言おう。このタイミングでこれを言ったら、笑うか?そんなことばかり考えるようになりました。あっ、『えぇー声ぇー』もよく使わせていただきました」

ありがとうございますぅー。
人を笑かすことが大好物になった中学時代。やめていたバスケットも社会人と共にリスタートし、遊びは同級生とカラオケ通い。が、しかぁーし、それは突然起こった。1995年に未曾有の被害を及ぼした、阪神淡路大震災 。辺り一面、瓦礫の山。兵庫県他が壊滅的な被害を受けていた最中、父はこう言った。

父「勉強も大事だが、今しか出来ないことをしなさい」

ボランティアに参加しながら様々な光景を目にした時、ふと湧いてきた疑問「勉強する意味ってある?」
中学校からエスカレーター式で高等高校に上がった夏休み、先生から放たれた言葉

先生「今の1年なんて、へでもない。もう1年いきなさい」

原級措置を食らい、今の同級生が先輩になるという事態に。ということは、新学期のクラスメイトは全員年下。沸々とわき起こる意欲、やるべきことはこれしかない!

alan「オモロイこと言いたい」

そっちかぁーい!

「今しか出来ないことをしなさい」と言った父も、さすがに 古古古古米 ならぬ 留留留留年 は辛い。高等学校 には 大学 に行くための試験が年に2回あり、進学させるため 神戸大学大学院生 の 先生 に 家庭教師 を依頼。さぁーこれから勉学に励むぞ!と机に向かったのはよいけれど、いつの間にか自分が描いている 漫画 の話へとシフトチェンジ。その 漫画 を先生に見せたところ「ちょっと、絵具を使った絵を描いてみたら」と、予想もしない展開に。先生、国語 を中心に教えていたのですが、実は 美術史 を研究されている バリバリの 院生。ここから、怒涛の 美美美美術 !? の お勉強 がスタート。

先生「ピカソは何でこんな変な目になっている?」

先生「フォービズムとは?」

など、「これはどういうことや?」という質問が続く日々。勧められた分厚い本、古典主義から解放する『現代思想を読む辞典』(今村仁司 著)も熟読。
ここで スキマのスイッチ PART2 が ON。

alan「面白い!」

今まで 漫画 を描くことが手すさびだった alan 氏に、芸術の基礎が兼ね備わった瞬間だった。
その甲斐あって!? 大学では経営学部 へ進学。アートへの探求心は益々エスカレートするんですが、「Marcel Duchamp(マルセル・デュシャン)の 便器 とか観たら、新しいものはない。新しいものこそ、アート」と位置付ける事により現代のものが作れなくなり、次第に アート に距離を置くようになります。
あぁ、折角 家庭教師の先生 に 芸術の基礎 を教わったのに勿体ない。

alan「家庭教師の先生ですが、私が大学時代、我が家の屋根裏に居候してました」

えぇー!
マジっすか!!
ちなみに alan 氏の弟さん、現在は著名な ヘッドスパリスト だそうなんですが、その当時は素っ裸でギターを弾きながら「聴いて、ギター」と言い、2階からよく降りてきてたそうです。美術史系先生の屋根裏居候 や、次男の全裸弾き語り。実に 前衛的 な光景だと思いませんか。

2003年に大学卒業後、商社に就職。セールスマンとして関西、四国、広島などを回り「人はどうやってものを買うか?」「人の心が読めるか?」と研ぎ澄まされていき、仕事にのめり込んでいきます。
そんなある日、取引先の百貨店のバイヤーの方が異動。送別会には、何を持っていけば良いのか。あっ、こういうのはどうだろう。

alan「画用紙に薔薇の花を描き、Thank you と書いたものをプレゼントしたら、喜んでくれました」

自分の絵で、周りが喜んでくれる。子供の頃から、常にあった 画家になりたい! という夢。気が付けば ポストカードにボールペン画 を描き、それを2年続けて インスタグラム にアップ。これが、スキマのスイッチ PART3。
それから知り合いのアーティストに「キャンバスに描かないと!」と言われ、神戸北野にあるパティスリー、 ChocolatRepublic Kitano の ギャラリーカフェ で、個展を2回開催。そして、アーティスト主体のアートフェア『UNKNOWN ASIA 2017』への参加を決める講評会で、「オモロイやん、出したらえぇやん」と 谷口純弘 氏に言われ出展。ダイナミックでユニークな横顔の作品で、ヒロ寺平賞 と カマサミ・コング賞 を受賞。

画像②
alan 作品

何度か『UNKNOWN ASIA』に出展を重ね、展示の依頼もくるようになったが、パンデミック に阻まれ、オンラインでの活動を余儀なくされます。そんな ディストピア の時期にアトリエで思い出すのは、「あの頃は、面白かったなぁ」という ノスタルジー。そうだ、過去に戻ろう!
中学の時に目にした川辺のエロ本や、ダイヤルQ2のチラシ。それらの 時代の産物 にレジンをかけコラージュし、この当時宿泊代などが割引になる『Go To トラベル』から着眼点を得た、『Go To タイムトラベル』シリーズを発表。現代思想、コンセプチャル・アートへと導かれた、スキマのスイッチ PART4 へと切り替わります。
『UNKNOWN ASIA 2021』では、「コスプレに肖像権はあるのか?」をコンセプトにした、コスプレシリーズを発表。

画像③
alan 作品
★alan インスタグラム(2021年10月11日)より

コスプレをした自画像。
alanのアイコンであるマルメを描くことによってコスプレをした自画像として成立するのではないかという試み。
コスプレをした人を描くのは違法なのか?ぬいぐるみを描くのは違法なのか?
考えていくと色々疑問が残る。
作品を通して問題提起できればと思う。
アメリカのフェアユースという概念ならOKで日本の著作権ではグレー、、、何とも不思議な現状。

ブースを訪れたお客様から「著作権、大丈夫ですか?」という声が多く寄せられた時、こう思った。

alan「著作権はみんな興味がある。その境界線はどこか?こういうことをやったら、面白いと思ってくれる」

それから 著作権 に関して勉強するようになり、作品を 弁護士の先生 に見せたところ「面白い。一緒に探っていこう!」と、前向きな進展に。
著作権では、近年《Balloon・Dog》などの作品で著名なアーティスト、Jeff Koons(ジェフ・クーンズ)などが 著作権侵害 で 裁判 になったりしていますが、20世紀に物議を醸し出したといえば、ポップアート 。
alan 氏は高校生の頃、祖父が住む サンフランシスコ へ遊びに行ったことがあり、Andy Warhol(アンディ・ウォーホル)や Roy Lichtenstein(ロイ・リキテンスタイン)など、本場でのアート作品に接する機会があったそうです。その際 ウォーホル の作品が10万円で販売されていて、服が欲しかったから諦めたそうなんですが、その事を今でも後悔しているそうです。
刺激的な都市、サンフランシスコ。そこで祖父に言われた言葉

祖父「人と違うことをやりなさい」

そして辿り着いたのが、ポップアート他著名な作品を ボーダー や モザイク で描く『Under50%+Point』。
モチーフは自分が感動したものや心地良いものを選び、素材の何%未満でオリジナル? 素材の何%以上が模倣?AIの時代、その興味は尽きません。
そんなシリーズを中心とした展覧会が、本展『alan olo exhibition Re:Re:』。

画像④
《I like the theater》
10F
アクリル・キャンバス
画像⑤
《過ぎていく毎日も(every day that passe)
30cmスクエア
アクリル・キャンバス

作品をご覧になった方々の感想って、気になりますよね。alan 氏によると、 台湾 ではストレートに「面白い!」 日本 では唸りながら「そうきたか!」
コンセプトが前面に押し出されている作品だからこその、解釈。

画像⑥
《言葉ひとつ足らないくらいで》
12S
アクリル・キャンバス
画像⑦
《誰か魔法をかけてよ someone do the magic》
6S
アクリル・キャンバス

alan「絵画として成立させるためには、バランス力が必要。ですからデザイン的にすることにより、バランスを整えているんです」

いやぁー、alan 氏の言葉を借りると「面白い!」
これに尽きます。

最後にメッセージをいただきました。

「問題提起を感じてほしい。貴方の日常の中にある、チャレンジの先のクリエイティブの刺激になってほしい。『これをやったら何か言われるんじゃないか』ではなく、それに取り組まない方が後悔をする。自分が持っている違和感の先にこそ、クリエイティブはあると思います」

小学校時代、教科書の偉人の顔 を消して顔を描き、高校時代にサンフランシスコで見た ウォーホル 作品 が脳裏に焼き付き、家庭教師から 芸術とは? 現代思想とは? を教わった若かりし頃。その ピース のひとつひとつが アップデート され、現在の制作 へと繋がっていく。
これからも alan 氏の言う チャレンジの先にあるクリエイティブ 。しかと見届けていきたいと思いますぅ〜 ♬

alan solo exhibition Re:Re:

LAUGH&PEACE ART GALLERY

2025年 5月29日(木)―6月9日(月)
13:00―18:00
火・水 定休日
LAUGH&PEACE ART GALLERY
大阪市中央区難波千日前3―15

LAUGH&PEACE ART GALLERY
Site
https://laugh-peace-art.com/

Instagram
https://www.instagram.com/laughandpeacegallery?igsh=NzRrNnE2dDRlcjY0

alan
Instagram
https://www.instagram.com/alan_art_alan?igsh=Z2VuazFwZHZtMG01

Osaka Art & Design2025
Site
https://www.osaka-artanddesign.com/

Instagram
https://www.instagram.com/osaka_art_and_design?igsh=YmtwN3dhNjk4NWh5

おかけんた
1961年3月28日生まれ。1983年に漫才コンビ「おかけんた・ゆうた」を結成。1986年「第17回NHK上方漫才コンテスト」優秀賞、1997年「第32回上方漫才大賞」奨励賞、1999年「第34回上方漫才大賞」大賞など。
並行して、アート分野で活動を開始。1994年〜1995年「東京国際AU展」作品展示(東京都美術館 )。1995年株式会社スプーン公募展でグランプリを受賞。1996~1998年「OCHA(大阪コンポラリーヒューマンアート)」をプロデュース。2014年からは「京都国際映画祭~映画もアートもその他もぜんぶ~」 でアートプランナーを務めた。「ART FAIR TOKYO」アートトーク (2007年~2010年)、「ART OSAKA」イベントMC (2008年~2012年)、「草間彌生 永遠の永遠の永遠」 国立国際美術館 ギャラリートーク (2012年)、ギャラリー A―LABのアドバイザー(2015年~)、京都精華大学客員教授(2018~2020年)、「茨木映像芸術祭」審査員(2021年)、「Any kobe2022」トークイベント (2022年)などを歴任している。