おかけんたの「えぇ~アート」#16

Ken Hamazaki VU Exhibition

浜崎健立現代美術館

♪えぇ~ 若かりし頃

「あんたは赤やね」

と、矍鑠とされた老女から言われ、上の部分が 赤のメガネ に買い換えたとたん、仕事が急増!暫くすると、赤いメガネをかけていた芸人が違う色に変えだし、いつの間にか独壇場になり “ 赤いメガネの人 ” と呼ばれるようになった。その後海外ロケの際に 赤いメガネ が盗難に遭い、「メガネ盗まれたぁーーー」と声を張り上げまわりに伝えていたら、いつの間にか 赤いメガネの人 から えぇ声の人 と呼ばれるようになった。

赤 ってインパクト強いだけに、選ぶのも勇気いりますよね。
大阪の南船場にある赤いビルから、赤い服、赤い靴、赤いサングラスという出で立ちで、赤い自転車に乗りながら颯爽とミナミの街を滑走している

“ 赤い人 ”

皆さん見掛けたことありませんか?
その人こそ、通称 レッドビル と呼ばれている 浜崎健立現代美術館 を主宰し、国内外を飛び回っているアーティスト、浜崎健 氏 (Ken Hamazaki) 。

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浜崎健
画像②
浜崎健立現代美術館

今回は 、浜崎健立現代美術館32周年記念の展覧会『Ken Hamazaki VU Exhibition』をご紹介。
Maze Painting という 迷路の絵 を中心とされてる展示なんですが、そもそも何で 赤 ? 何で 迷路 ?

浜崎健 氏は1967年、鳥取市にある 醤油の醸造や味噌、各種調味料の製造販売を営んでおられる 楠城屋商店 〈1900年(明治33年)創業〉の 分家 の 五人兄弟末っ子として産声をあげる。三男父の兄はオペラ歌手で、父の弟は 『陸軍中野学校』でスパイをやっていたそうで、本家には 家庭教師のトライ『ハイジ』シリーズ や 日野自動車『ヒノノニトン』シリーズ、 KDDI 『au三太郎』シリーズ の CMディレクター や 広瀬すず主演 『一度死んでみた』で 映画監督デビュー をされた 浜崎慎治 氏と めちゃくちゃ個性のキッつい親族関係。話はそれだけでは終わらない。

浜崎「父がテニスをやってた影響で皆やり始めて、兄たちはインターハイに出て自分も高校の時に国体で5位になり、鳥取のテレビにも “ テニス一家 ” として紹介され 早朝テニス を始め、有名になりました」

えぇー、赤い人が テニス で 国体5位! 知らんかった。

浜崎「3番目の兄がタンカーの船乗りで、海外でストーンズやビートルズのレコードを、その当時日本にはなかったタワレコの袋に入れて持って帰ってました」

浜崎 氏はその兄の影響で パンクロック にハマり、テニスの練習の時に セックス・ピストルズ のTシャツを着てラケットを振り、冷たい視線のスマッシュを浴びていたそうです。
4番目の兄の部屋はマンガだらけ、『ドカベン』とかを描いていたそう。
そんな そりゃもう大騒ぎさ大家族 の中でも、浜崎 氏が一緒にいる時間を大切にしていたのが、母。お母さんが描く線画に浜崎 氏が模様を描くんですが、その時に自然と描いていたのが 『迷路』。描くのに 集中力 と 判断力 が必要とされる 迷路 。大正生まれの父や年の離れた兄達がスゴく大人に見えて、大家族の中でも一人っ子的な存在感を纏っていた反面、唯一甘えることができたのが、母親。 “ 大家族 ” という入口から “ 子 ” という出口を探す 迷路 を 母 と共有することが、かけがえのない瞬間だったんですね。

で、この流れだったら、このままテニス街道まっしぐら!って皆さん思いますよね? ところがどっこい、そうは問屋が卸さない。

浜崎「常に80歳から見た自分、未来から見た今を俯瞰で見ていたら、ずっと現役でいたい、死ぬ最期までできることと考えると、体育会系は難しい」

劣化しない、最期にいいものを残すという生き方を選び、今まで辛気臭いと思っていた文科系が 「カッコええんとちゃう?」 と志向を180度転換。パンクの女王 ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne・Westwood) の パンクファッション に影響を受けていたこともあり、高校卒業後 いきなり ロンドン へ 渡英。さぁ、これからパンクで盛り上がるぞ!と 意気揚々と ロンドン に到着したら

浜崎「パンク、終わってました」

ガクっ。
それから、浜崎 氏曰く 「ちゃんとしたことをやってる」 知性と陰翳 を兼ね備えた ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド (The Velvet Underground) の ルー・リード 氏(Lou・Reed) をリスペクト。
帰国後フリマなどで、兼ねてから作っていたアクセサリーを マン・レイ (Man Ray) のパネルに飾っていたら 「卸し、しませんか」 と声がかかり、ロイヤルホテル〈現 リーガロイヤルホテル(大阪)〉の店舗で販売。そして20歳の頃、大阪西田辺 の ジャン 氏が営む BAR の2階でアクセサリーなどを売りながら東京にも売り込みに行き、やがて 梅田 の ロフト 8F にも展示。

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アクセサリー

ここでまた80歳から見た俯瞰の自分が呟きだす。

「このままでは、アクセサリー会社の人になってしまう・・・」

小学校の時、自分の分身を教室の椅子に座らせ、コソッと抜け出していた頃の虫が騒ぎだし、大きいものを作りたくなり、テレビなどをくるんだ立体を制作。ここでアクセサリーというアイテムから、アート作品へと移行。やがて拠点は東心斎橋の鰻谷へと展開。
で、ここで聞きたかったあの質問をぶつけてみた。

なぜ、赤?

浜崎「赤レンジャーになりたかった」

ズコっ。
今でこそ 赤 がメインカラーですが、それまでは黒ばかり着ていたそうです。よくよく考えると、黒はヒーローものでいうと敵の色。仮面ライダー の ショッカー しかり。ということで、赤いジャージを購入。
そして 1992年 『赤のインスタレーション展』 @KEN HAMAZAKI ART COLLECTION (大阪)、1994年 『迷宮の絵画展』 @KEN HAMAZAKI ART COLLECTION (大阪)を経て 南船場 へと移り、1995年には 浜崎健立現代美術館 個展、 『ア カイモ ナリ ザ展』 を開催。
2014年からは、睡眠中に描く “ 寝画 ” の展覧会 『Ken Hamazaki IN-SLEEP DRAWING 2013 / 寝画2013』 。2015年からはフライト中に機内で描き上げる 『Ken Hamazaki In-Flight Painting展』。パフォーマンスは、夏に行われるネバダ州の音楽とアートの奇祭『Burning Man』や、 MISIA コンサートの開演前などに行われる お茶会『RED TEA CEREMONY』が注目を集め、人気者に。

画像④⑤
Burning Man
RED TEA CEREMONY

そして2024年から2025年にかけて、The Velvet Underground をテーマにした『Ken Hamazaki VU Exhibition』を実施。

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Lou Reed
Maze Painting Yellow
1050 × 745mm
Silkscreen / signed
画像⑦
Lou Reed
Maze Painting Blue , Yellow , Red
1050 × 745mm
Silkscreen / signed
画像⑧
Lou Reed
Maze Painting Blue , Yellow , Red
330 × 245mm
A.P / signed
Canvas print
acrylic gouache , gesso

代表的なモチーフ、ルー・リード の 迷路 の シルクスクリーン と キャンバスプリント。赤い壁面に、ビビットなオーラが放たれる作品。

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The Velvetunderground
335 × 335mm
A.P / Signed
Canvas print
acrylic gouache , gesso

Maze Painting -Banana-
The Velvetunderground & Nico
470 × 470mm
Mixed Media / Signed

The Velvetunderground & Nico
1967 Stereo First Press

作品は3色以上は使わないという。特に “ 白 ” は苦手。

浜崎「白は純白、お母さんの色。だから使えないんです」

己の表現としての赤、母への思いとしての白。レッドビルで、浜崎 氏が赤ではなく唯一白を着たのが、お母さんが天に召された後に行われた個展でのレセプション。そこには2人にしかわからない 育み という 純白の迷路 があるのかもしれません。

最後に、皆さまへのメッセージをいただきました。

浜崎「ネットショップやミュージアムショップもやるので、皆さん来てください」

“ RED POP ” な 浜崎健立現代美術館 での展開。赤の他人の方でも、赤裸々なレッドゾーン マル秘アートトークで盛り上がりましょうよぉ~ ♫

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浜崎健 氏と展示風景

Ken Hamazaki VU Exhibition

浜崎健立現代美術館

2024.12.21 [sat] – 2025.2.21 [fri]
Open: Monday to Friday 11:00-19:00
※土日祝日は予約制

〒542-0081 大阪府大阪市中央区南船場4丁目11−13
TEL 06-6241-6048

浜崎健立現代美術館
website
https://kenhamazaki.jp/

Instagram
https://www.instagram.com/red_museum?igsh=ajFoNGZjbG8xNXJx

Ken Hawazaki
Instagram
https://www.instagram.com/kenhamazaki?igsh=MXkzY3prazFmYTBn

おかけんた
1961年3月28日生まれ。1983年に漫才コンビ「おかけんた・ゆうた」を結成。1986年「第17回NHK上方漫才コンテスト」優秀賞、1997年「第32回上方漫才大賞」奨励賞、1999年「第34回上方漫才大賞」大賞など。
並行して、アート分野で活動を開始。1994年〜1995年「東京国際AU展」作品展示(東京都美術館 )。1995年株式会社スプーン公募展でグランプリを受賞。1996~98年「OCHA(大阪コンポラリーヒューマンアート)」をプロデュース。2014年からは「京都国際映画祭~映画もアートもその他もぜんぶ~」 でアートプランナーを務めた。「ART FAIR TOKYO」アートトーク (2007年~2010年)、「ART OSAKA」イベントMC (2008年~2012年)、「草間彌生 永遠の永遠の永遠」 国立国際美術館 ギャラリートーク (2012年)、ギャラリーA-LABのアドバイザー(2015年~)、京都精華大学客員教授(2018年~2020年)、「茨木映像芸術祭」審査員(2021年)、「Any kobe2022」トークイベント (2022年)などを歴任している。