町谷武士/take took
GALLERY FUKUZUMI
♪えぇ~ 昭和の時代 。電車のスピーカーから流れるアナウンス後、大きな声で重複する子供がいた 。
子供「次はなんばぁー、なんばぁー」
乗客「うるさい!」
そぉーや、周りの人に迷惑やぁーちゅーねん 。誰や・・・って、オレやがなぁー。
電車が大好きで、いつもガラス越しに運転手さんを見ながら、駅名を叫んでいた幼い頃の私 。
そんな電車も好きでヒーローものが大好きだった 町谷武士 氏の展覧会 「町谷武士/take took」 に行ってきました 。
町谷 氏は 大阪府堺市 鳳 の出身 。少年の頃 近所にあった 国鉄 (現JR) の 社員食堂 に 足繁く通っていたそうです 。
町谷「7歳の頃に父を亡くし、食堂に行くと勇ましく見える国鉄の職員を見ながら、大人の香りのする父親像を探していました。ですので、未だにオッサンのいるお店の方が楽しいんです」
その子供の頃の光景、目に浮かびますよね 。
この頃、姉と黒板にオートマティズム的な線を描き、ジャンケンをして勝った方が先に描き足していき勝敗を決める遊びを、よくやっていたそうです。
それ以外は、一人で道路や壁にチョークで 『宇宙戦艦ヤマト』 や 『ウルトラマン』 などのヒーローを描き、友だちと遊ぶ時は割り箸をカッターナイフで削りボンドで接着して、船 や 飛行機 を作るなど、とてもクリエイティブでありながらも、一人になることを好む小学校時代を過ごしました。
中学生になると、徐々に勉強の仕方がわからず方向性を失い、美術の先生からは 「絵、好きとちゃうのん。美術部に入りや!」 と勧められますが、グループで活動することがあまり得意ではなく、美術部の入部は拒否 。
とは言っても描くことは好きだったので、「描くことで、変われるかも」 と 初芝高等学校 デザイン科 に進学 。
町谷「デザイン、建築、写真などが中心で挑戦することが楽しく、ここで勝ちたい!という競争心が芽生えてきました」
そんな時、美術スクール の 高瀬善明美術研究所 に行く機会があり、そこに通う学生たちの デッサン力 のレベルの高さに驚愕 。「大学に行きたい!」という気持ちが高まり、高瀬善明美術研究所 へ 。
そこで 高瀬先生 と 徳永先生 から 「形式ばったことではなく、自由にやりなさい」 と言われ、緊褌一番 。翌年、大阪芸術大学 美術学科絵画コース に入学 。
その大学時代、美術館で観てインスパイアされたのが、版画からミクスト・メディアまで展示されていた 『版画芸術の饗宴 ケネス・タイラーと巨匠たち:1963-1992』 。
町谷「ペインティングの世界だけだったのが、こんなに楽しいものがあったのか!と、アートの見え方が変わりました」
人と違うものを作りたい 。そういう思いからか、授業内容とは少し違うものに挑戦し、平面から半立体的なものも制作 。
大阪芸術大学 卒業後、講師として 高瀬善明美術研究所 で教鞭を執りながら、97年に 信濃橋画廊 で 個展を開催 。円滑に物事が進んでいるように思えたが、また例の虫が騒ぎだした。
町谷「このままうまくなってしまったら、あれ、オレってこんなことやりたかったのかなぁ」
と、またもや方向性を見失い、高瀬善明美術研究所 を退職 。 新たに 呉本俊松 先生の美術教室のスタッフとして就職 。
2009年には 番画廊 での個展も予定されていましたが、「やめよ、やめよ。これからどうしょう」 と鬱屈した精神状態の最中、呉本先生が当時のアトリエを訪問 。その時 呉本先生に 「これ、発表せえへんか?」 と言われたのが、部屋の片隅に置いてあったオモチャめいたものの数々 。それは小学校時代、割り箸 で作った 船 や 飛行機 の延長線上にある ノスタルジック なもの 。 これ、せえへんかったらどうする!と、2010年の個展ではその立体も発表 。
それが功を奏し、福住画廊 (GALLERY FUKUZUMI) の 福住伸一郎 代表の目に留まり、2011年に 福住画廊 で個展 。この頃には 幼少期にテレビでよく見ていた ヒーローもの のキャラクター 、そして 『野生の王国』 などで目にした プリミティブ なものをイメージする作品が展示され、来廊者の心を鷲掴み 。
で、今回の展覧会。
タイトルが 『take took』 。
町谷「人間が人間っぽくなった二足歩行の時代 。手が自由になり触る、道具を作るなどで文明に至りました」
町谷「今の時代、ものを触ることを必要としなくなっている。このデジタル社会、人間ってもっと感じれるのに、それが麻痺していってるのを感じます」
原始時代やローマ帝国の時代 。優れた手作業が現在の礎を築き、触ったり文字や文献を伝えていくことにより進歩へと繋がってきたことを、再認識させてくれる作品 。
ヒーローが戦う際の決めポーズがモチーフ 。
一見落書きのように見える町谷作品、意味があるようです。
町谷「想像がつくラインは描きたくない、上手に描きたくなくて、アクシデントが必要なんです 。だから片目を閉じて描いたり、利き手と違う方で描いてみたり 。そうすることにより、違う自分が出てきてほしいんです」
四方を額縁に模して描いたように見えますが、実はこれ絨毯の模様 。姉と共に自宅で絨毯の上で描いていたのが、そのまま反映されています 。現在もそのスタイルで描いているそうです 。
モチーフは、漫画 パーマン ? ブービー ?
仮面のモチーフが多いのは、変わりたい、何かと戦い守ろうとしている、ヒーローになろう! という思いが込められています 。
こちらは木彫の半立体の作品 。素朴で匂い立つ、木の重要性が伝わってきます 。
最後にメッセージをいただきました 。
町谷「ツルっとしたものだけではなくて、ザラザラしたものを触って遊びましょう」
小さい頃、誰もが憧れていたヒーローやヒロイン 。町谷 氏にとっての最高のヒーローは、ウルトラマン でもなく、パーマン でもなく、ひょっとしたら 国鉄の食堂で面影を追い求めていた お父さん なのかもしれませぇ~ん ♫
町谷武士/take took
GALLERY FUKUZUMI
2024年10/7(月) – 26(土)
11:00 – 18:00(土曜日15:00迄)
日曜・祝日休廊
大阪市中央区伏見町3-2-12 春海ビル3F
Tel/Fax : 06-6232-0608
Mail : fukuzumi@bird.ocn.ne.jp
HP : www.fukuzumi-garo.com
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町谷武士
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