おかけんたの「えぇ~アート」#11

「たまゆらのこどもたち」
はまぐちさくらこ

京都・西陣床下土風レジデンス


♪えぇ~ 2009年、東京の Bunkamura Gallery さんでの出来事。

2歳くらいの男の子が、半べそをかきながらギャラリーに親御さんと共に入ってきた。その男の子が、何故か私を見詰めている。

これはきっと「オジサン笑わしてくんない?」というサイン。

芸人魂に火がついた!

よし、この場は百戦錬磨のあのモノマネで、この男の子を笑顔にするしかない。
私は本息で、ドナルドダックのモノマネを披露。果たしてその男の子の反応や如何に・・・

「ビィャーーーーー」

サイレンのように響き渡る泣き声。私は無我夢中で男の子を作品の前に連れていき、

「ほらほら、この絵みてごらん。カワイイでしょ」

と指を指すと、あら不思議。男の子は泣き止み、笑顔になったではありませんか。

そんな魔法のような作品を描いたのは、京都在住のアーティスト、はまぐちさくらこ さん 。

画像①
『-Emotional Colors- はまぐちさくらこ・町田夏生 展』Bunkamura Gallery
はまぐちさくらこ 展示風景
※2009年 開催

さくらこさんは、京都の三条にある 『ライト商會』 という 骨董・喫茶・ギャラリー を営んでおられるご両親の長女として生まれ、幼稚園の頃から 『ひみつのアッコちゃん』 や 『魔法の天使クリィミーマミ』 などの漫画をよくノートや画用紙に描いていたそうです。私も ライト商會 さんには何度かうかがったことがあるのですが、薄明かりの骨董スペースには 四谷シモン 氏の 人形作品などが置かれていて、興味深く拝見させていただいたことを覚えています。

中学生になると、1冊の漫画ノートを友だち数人で描き回すようになり、さくらこさん は なんと ギャグ漫画 を描いていたそうです。
高校生の頃は アウトサイダー・アート (西洋の美術教育を受けずに制作した作品) の本や インディーズのJ-POP に興味津々 。
その後、京都嵯峨美術短期大学 絵画3コース に進み、絵画、立体、写真などを学びます。
卒業後、 2002年に 村上隆 氏が主催された 現代美術の祭典 『GEISAI #2』(東京ビッグサイト 西4ホール) に ペインティングユニット “ うりちゃんさくちゃん ” で参加され、出展者809組の中から 『奈良美智個人賞』 を受賞 。

さくらこ 「奈良さんから、『やめないで続けていってね』と言われたことが嬉しかったです」

奈良美智 氏のファンでもあった さくらこさん にとっては、最高のコメント 。

この受賞を皮切りに、

2003年「GEISAI #3」/ Nadiffスカウト賞 

2004年 「GEISAI #5」/ 金賞

2005年 美術出版社「みづゑ賞」絵本部門 / 大賞

2006年 「GEISAI #9」/ 成山画廊スカウト賞

2006年 「GEISAI #10」/ HIROMI YOSHII Galleryスカウト賞

と受賞ラッシュが続き、そりゃもう大騒ぎさ 。

その勢いはとどまることを知らず、2007年と2008年には個展を年間5本。
2010年には 絵本 『ぱぱごはん」(ビリケン出版) を出版し、同年の 国立国際美術館での 『絵画の庭 ーゼロ年代日本の地平からー』 では、大作を数点発表 。
そして結婚後、出産を機に作家活動を3年間休止。一路順風な日々。
しかしそれは突然起こった。

息子さんが3歳になった時、再び絵を描き始めるんですが・・・

さくらこ「白黒の絵しか描けなくなってしまったんです」

楽しい筈なのに、描く絵は暗いものばかり。子育て脳から絵育て脳への転換が、上手くいかない。
幼稚園の頃からずっと女の子や子供の絵を描き続けてこられたのは、自分の中に子供の頃の気持ちがずっと存在し続けていたから。ひょっとしたら “ 母 ” という立ち位置が、制作に困惑を招いたのかもしれません。

それから何度も絵筆を走らせ、やがて色も使えるようになり、個展を数回開催。
今回の展覧会は、女の子や子供たちの一瞬を表現された最新作を展示。

画像②
《て とて》 アクリル
画像③
展示風景
画像④
《まいにちのおんがく》 油、アクリル
画像⑤
展示風景

この個展が決まったのが9ヶ月前、さくらこさんは半年前からこの 京都・西陣床下土風レジデンス さんに通い続けたそうです。

さくらこ「この空間をまとい、それから描き出す。そうしてここに元からあったものたちと溶け込んでいくんです」

さくらこさんが昔から好んで個展をされてるところは、ほとんどが町家。それも薄明かりで風情のあるところ。それは、子供の頃から慣れ親しんできた 『ライト商會』 の空気感にも似た、ノスタルジー漂う空間。

画像⑥
《てをとりあわなくても》
画像⑧
展示風景
画像⑦
《ほうせきよる》
画像⑨
展示風景

最後に皆さまへのメッセージをいただきました。

さくらこ「心と体の境界線が溶けて、想像の中でどこまでも広がっていく。そういうことをこの場所に来て、体感してほしいです」

おうちとは、子供のころ遊んだり寝転っがって季節を感じながら、佇まいそのものを感じたところ。そんな記憶を呼び起こさせてくれる、貴重な展覧会。

今週も新たにドローイングが追加されたり、プライスリストもさくらこさんの手書きというから、もうたまらん!

秋から、新聞連載小説挿絵や読み切り絵本掲載。それに個展やグループ展などの予定もあるそうですから、マジでワクワクが止まらんやんかいさぁ~ ♫

『たまゆらのこどもたち』

はまぐちさくらこ

日時:2024年9月14日(土)-9月23日(月・祝)

11:00-17:00

*17日(火)は休み*金・土・日は19:00まで

場所:京都・西陣床下土風レジデンス

〒603-8225 京都府京都市北区紫野南舟岡町8
※最寄りバス停
千本鞍馬口

主催・企画:gallery ayatsumugi

会場提供、協力:床下土風レジデンス

はまぐちさくらこ
web site
https://sakurakohome15.com

Instagram
https://www.instagram.com/sakurakohamaguchi

Facebook
https://www.facebook.com/hamaguchi.sakurako/

展覧会主催・企画
gallery ayatsumugi

web site
https://www.ayatsumugi.net/

Instagram
@gallery_ayatsumugi

会場提供、協力:床下土風レジデンス
https://www.yukashita-tsuchikaze.jp