おかけんたの「えぇ~アート」#15

黒田アキ

「/I/ CHI-KYU / CITY / 」

MORI YU GALLERY KYOTO

♪えぇ~ レセプション というのが、展覧会初日によく催されます。作家さんも在廊され、コレクターやアートラバー、アーティストの皆さんなどが個展開催を祝い、ワイン片手に作品を鑑賞。アート談義に花咲かせ、至福のひとときを味わえます。
そんなある日、とあるレセプションで私が遅れてギャラリーに到着したら、入口付近でパフォーマンスをされてる方が一人。「あぁ、身体表現 されてるんやなぁ」 と暫く見ていたら、知り合いの方が一言

「酔ぉーとるだけです」

マジか!

確かに、食べ物を口いっぱいに頬張って クッチャ クッチャ いわせながら パフォーマンス する方は、見たことがない。
と、そんな話はこっちへ置いといて。
パリ在住の世界的なアーティスト 黒田アキ 氏 の MORI YU GALLERY KYOTO さんでの 黒田アキ「/I/ CHI-KYU / CITY / 」 の オープニング・レセプション へ 行ってきました。

黒田アキ 氏は 1944年京都生まれ、パリ在住。1980年代からパリで画家として活動。2006年には、フランス芸術文化勲章 を受勲。
父は経済学者で同志社大学教授、祖父は呉服商で芸術家のパトロン。そして従兄弟は、淺井忠 氏から 関西美術院 という私塾を受け継ぎ、梅原龍三郎 氏、安井曾太郎 氏などを指導された 洋画家 黒田重太郎 氏。
もうこれだけで、背筋がピン!
期待感に胸踊らせながら、ギャラリーのドアをオープン。

画像①
《surumessage》 2024
116.7 × 91cm
surume and acrylic on canvas

えっ、するめ!?

あっ、ケータリングやな。・・・違う、違う。
これは、黒田 氏にお聞きしないと!

黒田「イカがあるから、ピン!とする。小説家の イタロ・カルヴィーノ によると、ロシアの森の中に湖があり、野生の鳥たちがいる。そこに爆弾から馬が逃げてきて、鳥の羽根が一本、零度以下で凍りついた湖に落ちた瞬間に水が凍っていき、世界が結晶化する」

つまり凍りそうで凍らなかった世界がちょっとした刺激によって一瞬にして変わるような・・・。そんな展覧会自体を結晶化させ、構えた鑑賞者をフラットにさせる要素がなにか必要である。
黒田 氏の話は続きます。

黒田「ある茶会に招待され、飛び石の上を歩く。あらかじめ石を傾けておき、そこを招待客が歩くとひっくり返り、着物と足袋が汚れる。お風呂へどうぞ と案内され、用意された着物を着て食事をし、そして茶会が始まる」

茶室へと向かう招待客の構えと緊張感を一度解放させ、茶の湯へと導く。意表を突いたこの流れ。それが するめの作品 《surumessage》 には込められています。
ちなみに私も透視術のネタなどで、「ハッ!」と緊張感を与えたあとボソっと小ネタを挟み、お客様のちょっと前のめりになった構えを外したりします。アートもお笑いもそのタイミング、“ 間 ” が大事なんですね。
で、何で スルメなんですか ?

黒田「オレにもわからへん (笑) アイデアが落ちてくる。そんなもんやと思う。イケメンならぬ、イカメン。噛み締めれば噛み締めるほど味が出て、メッセージが出てくる」

長きに渡る画業の蓄積があるからこそ、落ちてくるアイデア。私も芸歴42年、そうありたいものです (汗)

画像②
《Self-portrait》 2024
193 × 130.3cm
acrylic and ink on canvas

闘牛の如くパワフルな セルフポートレート 。情熱や光、環境への恩恵が伝わってきます。

画像③
《Self-portrait》 2024
116.7× 91cm
acrylic on canvas

画面上に書かれた 『HAPPY BOY 』。実は 黒田 氏、昨年の帰国時に 取扱ギャラリー の MORI YU GALLERY KYOTO 森裕一 代表 が 黒田 氏の異変に気づき、京都市内の病院へとお連れしたら、初期脳梗塞 と判明。即 点滴治療 を行ったそうですが、その点滴は日本人に効く点滴で 「パリには恐らくない」 というもの。その後検査で 腹部大動脈瘤 も見付かったそうで、手遅れにならずに良かったぁー。手術を終え、退院後 早速制作に取り掛かり、京都での2本の展覧会開催へと相成りました。そんなお話をお聞きし作品を拝見すると、お元気になられた 黒田 氏 のまさに 『HAPPY BOY』 たる所以がひしひしと伝わってきます。

画像④
《MIDNIGHT SPAGHETTI》 2023
116.7× 91cm
acrylic on canvas

幼少の頃、一人っ子 だった アキ少年 は 絵を描く傍ら、めんこやかくれんぼ、ケンカに明け暮れる日々。

黒田「遊んでても、決められたルールの中では “ あそび ” がない。自分でルールを決めると人が寄ってくる。そしたらルールを変える。」

ここに、作品と同じく オリジナリティ が見て取れるのは、十指の指すところ。
方や、家に帰れば美人でヒステリックな母親が 「空飛ぶ円盤!」 と言いながら、アキ少年 目掛け 皿が飛んでくることも。《MIDNIGHT SPAGHETTI》は、そんな記憶から生まれたのかも!? と私は勝手に想像し、ニヤニヤ。

画像⑤
《untitled》 2024
194 × 162cm
acrylic and mixed media on canvas

この作品には

・宝ケ池の子供の頃の想い出、父との関係性
・スペースゲート、別の宇宙に飛んでいく
・女性は体に別の宇宙を持っている

うねりのあるブルーのマチエール、厚塗りの背景。キラキラとした光沢、楕円形のセメント色の枠。黒田 氏がテーマにされている 『コスモガーデン』 を象徴するような作品。

画像⑥
《untitled》 1973
38 × 45.5cm
acrylic and mixed media on canvas

こちらは、シュールレアリスム に影響を受けていた、若手の頃 (1973) の作品 。これは、貴重です。

画像⑦
右《Self-portrait》 2024
116.7× 91cm
acrylic on canvas
左《Self-portrait》 2024
116.7× 91cm
acrylic on canvas
画像⑧
右《untitled》 2024
116.7 × 91cm
acrylic and oil stick on canvas
左《untitled》 2024
53 × 45.5cm
acrylic and oil stick on canvas

強い作品や無邪気な作品。このようなバリエーションは、どこから生まれてくるのだろうか?

黒田「何も考えず、手が勝手に動くんです。数時間で大体完成します。」

画像⑨
展示風景

最後に、パリのお話をうかがいました。

黒田「カフェによく出掛けます。そこには哲学者や映画監督、作家など様々なジャンルの人が集い、何時間も話したりしてます」

ギャラリー代表の 森 氏によると、

森「横のテーブルの方のお話しに、 スーっと 自然に入っていき、いつの間にか意気投合されてるんです」

光景が目に浮かびますよね。
そういった “ 自然体 ” こそが内なるインスピレーションをあぶり出し、絵筆からキャンバスへと投影されていく。パリに行き、四畳半程の狭い住居からスタートされた時の強い意志と、幼き頃 “ あそび ” を考えた時の無邪気な思い。そしてまさかの昨年2024年の入院生活。そんな生きざまの全てが、今回の展覧会には反映されています。

「あぁ、パリに行ってエッフェル塔見ながらカフェでお茶したいなぁ」 と、新世界の通天閣を見ながら思う、年明け2025年でしたぁ~♫

画像⑩
右から
森裕一、黒田アキ、おかけんた

黒田アキ「/I/ CHI-KYU / CITY / 」]

2024/12/08[日] – 2025/02/02[日]
12:00-18:00
月火祝休
20025年12月23日(月) – 2025年1月8日(水)冬季休廊

MORI YU GALLERY KYOTO
〒606-8357 京都府京都市左京区聖護院蓮華蔵町4−19
tel:075-950-5230 fax:075-950-5240
E-mail: info@moriyu-gallery.com

黒田アキ
Instagram
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黒田アキ 開催中の展覧会

AKI KURODA
ORGANIC CITY BREAKING

2024.11/30 -2025.2/1

MORI YU GALLERY VIEWING ROOM
open: FRI and SAT / 1pm-5pm
*APPOINTMENT ONLY from 6th December 2024

MORI YU GALLERY VIEWING ROOM
〒602-0007
京都府 京都市
上京区下清蔵口町133−17
075-950-5230
info@moriyu-gallery.com

おかけんた
1961年3月28日生まれ。1983年に漫才コンビ「おかけんた・ゆうた」を結成。1986年「第17回NHK上方漫才コンテスト」優秀賞、1997年「第32回上方漫才大賞」奨励賞、1999年「第34回上方漫才大賞」大賞など。
並行して、アート分野で活動を開始。1994年〜1995年「東京国際AU展」作品展示(東京都美術館 )。1995年株式会社スプーン公募展でグランプリを受賞。1996~98年「OCHA(大阪コンポラリーヒューマンアート)」をプロデュース。2014年からは「京都国際映画祭~映画もアートもその他もぜんぶ~」 でアートプランナーを務めた。「ART FAIR TOKYO」アートトーク (2007年~2010年)、「ART OSAKA」イベントMC (2008年~2012年)、「草間彌生 永遠の永遠の永遠」 国立国際美術館 ギャラリートーク (2012年)、ギャラリーA-LABのアドバイザー(2015年~)、京都精華大学客員教授(2018年~2020年)、「茨木映像芸術祭」審査員(2021年)、「Any kobe2022」トークイベント (2022年)などを歴任している。